「理学療法士の平均年収はどれくらいなのか」「自分の給料は低いのだろうか」。毎日一生懸命働いているのに、同世代の友人と比べて収入が伸びないと感じ、不安になっている理学療法士の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、理学療法士の年収を、厚生労働省や国税庁が公表している統計データをもとに客観的に整理します。あわせて、理学療法士の給料が「低い」と言われる構造的な理由と、収入を上げるために考えられる選択肢も解説します。感覚ではなくデータで現状を把握することが、今後のキャリアを考える第一歩になります。
理学療法士の平均年収は約444万円(4職種合算の目安)
厚生労働省の統計データ
理学療法士の年収を知るうえで最も参照されるのが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。この調査では、理学療法士は「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士」という4職種をまとめた区分で集計されています。
令和6年賃金構造基本統計調査(10人以上の事業所)によると、この区分の数値は次のとおりです。
| 項目 | 令和6年調査 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額(月額) | 31万1,400円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 70万4,700円 |
| 年収換算(月額×12+賞与) | 約444万円 |
| 平均年齢 | 35.5歳 |
| 平均勤続年数 | 7.8年 |
年収換算額は、月額を12倍して年間賞与を加えた目安の数値です。なお、これは4職種の合算値であり、理学療法士単独の値ではない点に注意してください。
前年からの変化
同じ区分の令和5年調査の数値は、きまって支給する現金給与額が月30万900円、年間賞与その他特別給与額が71万4,400円で、年収換算では約432万円でした。
| 項目 | 令和5年調査 | 令和6年調査 |
|---|---|---|
| 月額(きまって支給する現金給与額) | 30万900円 | 31万1,400円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 71万4,400円 | 70万4,700円 |
| 年収換算 | 約432万円 | 約444万円 |
月額は増えている一方で、賞与はやや減っています。調査対象や回答事業所は年ごとに変わるため、1年分の変化だけで傾向を判断するのは難しいものの、大きく伸びているとはいえない状況です。
統計を見るときの注意点
賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」には、基本給のほか、残業代や各種手当も含まれます。また、10人以上の事業所が対象のため、小規模な事業所の状況は反映されていません。
勤務先が病院か介護施設か、急性期か生活期か、都市部か地方かによっても給与水準は異なります。統計はあくまで全体の目安として捉え、自分の状況と比べる際は、同じ地域・同じ分野の求人情報なども参考にするとよいでしょう。
理学療法士の年収は全体平均と比べて低い?
給与所得者全体の平均との比較
国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円で、前年比3.9%増でした。
| 統計 | 金額 |
|---|---|
| 理学療法士等4職種の年収換算(令和6年賃金構造基本統計調査) | 約444万円 |
| 給与所得者全体の平均給与(令和6年分民間給与実態統計調査) | 478万円 |
単純に並べると、理学療法士等の年収換算は給与所得者全体の平均を下回っています。ただし、2つの統計は調査方法や対象が異なるため、厳密な比較はできません。あくまで大まかな目安として捉えてください。
「国家資格なのに」と感じる理由
理学療法士は、養成校で3〜4年学び、国家試験に合格して初めてなれる専門職です。それにもかかわらず、収入が全体平均を大きく上回るわけではないことに、もどかしさを感じる方も多いでしょう。
元PTのアドバイザーとして相談を受けるなかでも、「専門職として努力してきたのに、収入面で報われている実感がない」という声はよく耳にします。この感覚には、理学療法士の働く仕組みそのものが関係しています。
理学療法士の給料が「低い」と言われる5つの理由
理学療法士の給料が低いと感じられるのは、個人の能力や努力が足りないからではありません。多くは、理学療法士が働く医療・介護の仕組みに由来する構造的な理由です。ここでは代表的な5つの理由を見ていきます。
理由1:診療報酬・介護報酬という公定価格で収入が決まる
理学療法士が提供するリハビリテーションの多くは、医療保険の診療報酬や介護保険の介護報酬によって価格が決められています。つまり、どれだけ質の高いリハビリを提供しても、1単位あたりの収入は国が定めた公定価格の範囲内に収まります。
一般企業のように、付加価値の高いサービスを開発して価格を上げたり、売上を大きく伸ばしたりすることが難しい構造です。病院や施設の収入に上限がある以上、そこで働く理学療法士の給与も大きくは伸びにくくなります。
理由2:1日に実施できる単位数に上限がある
医療保険の疾患別リハビリテーションは、20分以上の個別訓練を「1単位」として算定します。厚生労働省の留意事項通知では、療法士1人あたりの実施単位数について、1日18単位を標準とし週108単位まで、1日24単位を上限とする基準が示されてきました(算定要件は診療報酬改定で見直されることがあるため、最新の内容は厚生労働省の告示・通知で確認が必要です)。
つまり、理学療法士1人が生み出せる収入には、時間と制度の両面から上限があるということです。どれだけ頑張っても「たくさん働いて大きく稼ぐ」ことが構造的に難しいのは、この仕組みによるところが大きいといえます。
理由3:資格登録者数が増え続けている
内閣府『障害者白書』(令和8年版)によると、理学療法士の資格登録者数は2025年12月末時点で236,289人です。旺文社教育情報センターの集計では、2026年の理学療法士国家試験の合格者は11,156人で、毎年多くの理学療法士が誕生しています。
さらに、厚生労働省の理学療法士・作業療法士需給分科会(2019年4月)では、PT・OTの供給数が2040年頃に需要数の約1.5倍になるとの需給推計(案)が示されました。働き手が増えれば、一人ひとりの給与が上がりにくくなる要因になり得ます。
理由4:昇給の幅が小さく、役職ポストも限られる
多くの医療機関や介護施設では、昇給の仕組みが年功的で、1年あたりの昇給額が小さい傾向があります。大きく収入を上げるには主任や科長などの役職に就く必要がありますが、ポストの数は限られています。
その結果、経験を重ねても収入の伸びを実感しにくいという状況が生まれやすくなります。
理由5:専門性の高さが給与に反映されにくい
認定理学療法士や専門理学療法士などの資格を取得しても、資格手当がない、あるいは手当が小さい職場もあります。専門性を高める努力が、必ずしも給与に直結しないことは、モチベーションの面でも悩ましい点です。
理学療法士の年収に差が出るポイント
同じ理学療法士でも、働き方や職場によって年収には差が出ます。主なポイントを整理しておきましょう。
| ポイント | 年収への影響の傾向 |
|---|---|
| 勤務先の種類 | 病院・クリニック・介護施設・訪問リハなどで給与体系が異なる |
| 役職 | 主任・科長などの役職に就くと役職手当がつくことが多い |
| 地域 | 都市部と地方で給与水準や求人状況が異なる |
| 働き方 | 訪問リハでは件数に応じたインセンティブ制度を設ける事業所もある |
| 手当 | 資格手当・住宅手当・夜勤や休日出勤の有無などで差が出る |
たとえば病院では、規模や経営母体によって賞与や手当の水準が変わります。介護施設や訪問リハビリでは、介護報酬の仕組みのなかで給与が決まるため、病院とは異なる給与体系になっていることがあります。同じ「理学療法士」という職種でも、どこで、どのように働くかによって年収の見え方は大きく変わるのです。
いずれも職場によって制度が大きく異なるため、転職や異動を検討する際は、求人票の給与欄だけでなく、手当や賞与、昇給の仕組みまで確認することが大切です。
年収を見るときに押さえたい3つの視点
視点1:額面と手取りの違い
統計で示される年収は、税金や社会保険料が差し引かれる前の「額面」の金額です。実際に受け取る手取り額は、額面よりも少なくなります。生活のやりくりを考える際は、給与明細で手取り額も確認しておきましょう。
視点2:年収の推移で考える
ある時点の年収だけでなく、今後どのように推移していくかも大切です。今の職場の昇給の仕組みや、役職に就いた場合の手当などを確認すると、5年後・10年後の年収をある程度見通すことができます。将来の見通しが立つと、今の職場に残るか、別の道を考えるかの判断材料になります。
視点3:労働時間とのバランス
同じ年収でも、残業が多い職場と少ない職場では、時間あたりの収入や生活の満足度が大きく異なります。年収の金額だけでなく、労働時間や休日数、勉強会など業務外で費やしている時間も含めて考えることが大切です。
年収が低いと感じたときに考えたいこと
まずは現状を正しく把握する
「給料が低い」と感じたら、まずは自分の年収を客観的に確認しましょう。源泉徴収票で年間の総支給額を確認し、同じ地域・同じ分野の求人と比べてみると、自分の給与が相場からどの程度離れているかが分かります。
相場より大きく低い場合は、職場を変えることで改善できる可能性があります。相場並みであれば、職場を変えるだけでは大きな改善は見込みにくく、働き方そのものを見直す必要があるかもしれません。
収入を上げる選択肢は大きく2つ
理学療法士が収入を上げる方法は、大きく分けて「臨床に残って収入を上げる道」と「異業種で収入の可能性を広げる道」の2つです。
- 臨床に残る道:役職を目指す、手当や賞与の充実した職場へ移る、訪問リハなどの働き方を選ぶ
- 異業種の道:医療機器メーカー、福祉用具、人材・キャリア支援、ヘルステックなど、臨床経験を活かせる企業へ転職する
それぞれのメリットや注意点は、理学療法士が年収を上げる方法で詳しく解説しています。
異業種に進む場合の注意点
異業種に転職すると、公定価格の仕組みから離れるため、成果や役割に応じて収入が変わる環境に身を置けることがあります。一方で、未経験の職種に就く場合、転職直後は年収が一時的に下がる可能性もあります。目先の年収だけでなく、3年後・5年後の見通しで判断することが大切です。
医療の外で働く選択肢を詳しく知りたい方は、理学療法士の異業種転職ガイドをご覧ください。
収入だけで判断しない
年収は大切な要素ですが、仕事の満足度はそれだけでは決まりません。患者さんと関わるやりがい、働きやすい人間関係、家族との時間など、今の職場で得られているものも含めて考えることが大切です。
「臨床を続ける」と決めることも、立派な選択です。収入面の不安を整理したうえで、自分が納得できる働き方を選んでください。キャリア全体を見直したい方は、理学療法士のキャリアアップ方法も参考になります。
まとめ
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では、理学療法士を含む4職種の年収換算は約444万円(理学療法士単独の値ではない)
- 平均年齢は35.5歳、平均勤続年数は7.8年。令和5年調査の年収換算は約432万円だった
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の給与所得者の平均給与478万円と比べると下回るが、統計の性質が異なるため目安として捉える
- 給料が低いと言われる背景には、公定価格の仕組み、実施単位数の上限、資格登録者数の増加、昇給幅の小ささなどの構造的な理由がある
- 収入を上げる方法は「臨床に残る道」と「異業種の道」の2つ。収入だけでなく、やりがいや働き方も含めて判断することが大切
リハノビキャリアでは、元理学療法士のアドバイザーが、年収の悩みも含めたキャリアの相談に無料で応じています。転職ありきではなく、「今の職場で頑張る」「臨床を続ける」という結論になっても構いません。LINEに登録すると、医療従事者のためのビジネス適性診断などの特典と60分の無料オンラインキャリア相談をご利用いただけますので、収入面のモヤモヤを整理したいときに気軽にご活用ください。